「共有名義になっている不動産はどうやって売却したらいいの?」
「共有名義の不動産の売却はどんな方法があるの?」
「そもそも共有名義の不動産って何?」
など、不動産を売却しようとした時に共有名義の場合に様々な疑問や悩みも持っている方も多いと思います。
そこで今回は不動さんが「共有名義(持分)の不動産を売却する方法」「共有名義の不動産を売却する時の注意点」について詳しく解説してくれるみたいです。
共有名義の不動産を所有していて売却を検討している方は参考にしてみてください。
共有名義の不動産を売却するには?
不動産には必ず所有者がいますが、所有権を複数の人が持つ共有名義が認められています。
単独名義も共有名義も同じ土地になりますが、共有名義の場合はどちらかと言うと不便に感じる部分が多いでしょう。
共有名義になる原因はいくつかありますが、例えば次のような状況が良いです。
・ 所有者が亡くなり、所有権を複数人が相続した
・ マイホームを購入するときにお互いに資金を出した
・ 二世帯用住宅の購入をするときにお互いに資金を出した
相続などの共有名義も購入時に資金を出し合った共有名義も、共有名義としての扱いは変わりません。
売却時する時に同じ問題が発生します。
その問題は、共同所有者全員が売却に同意しないと売却できない点です。
ここからは、共有名義の不動産を売る方法について、3つのパターンを紹介します。
① 持分を売る
② 分筆して売る
③ 売却代金を持分割合で分ける
どの方法も違う性質を持っているので、最適な売却方法については他の共有名義人とよく話し合いましょう。
共有名義の不動産って何?
共有名義の不動産とは、複数の人が一つの不動産を共有している状態のことです。
この時、名義人ごとに「持ち分」と呼ばれる割合が決められています。
「不動産の持ち分」とは、所有面積のことではなくて不動産の権利を表すものです
例えば、土地の「持ち分1/2」は土地の面積半分をその人が所有しているという訳ではなく、「1/2の所有権を持っている」という意味です。
なお、土地の所有者が複数人いる場合は、土地全体に対してどれくらいの権利を持っているかを表す割合が必ずあります。
これを持分割合と言います。
すべての所有者は、土地に対して持分割合の権利を持っていて、これは他の人から制限を受けることはありません。
しかし、この持分割合で勘違いしやすいのは「持分割合に比例した面積を所有している」と思ってしまうことです。
しかし、所有権は持分割合に関係なく、土地全体を所有していることに注意が必要です。
共有名義と持分割合の意味
例えば、1つの土地が2人の共有名義である場合。
それぞれの持分が1/2ずつや1/3、2/3を分かれていても、土地自体は1つしかない扱いです。
土地は1つなので2人の所有者が面積を分けているとは考えずに、1つの土地の「権利」を2人で分けていることになります。
このような考えなので、共有名義の土地を売る時は共有者全員が承諾しなくてはいけません。
そのため、誰か1人でも反対すれば土地を売ることができません。
共有名義の土地は、自分の土地でもあり共有者の土地でもあるため、勝手に売ることができません。
そして、持分がある共有者は持分割合に関係なく所有者の1人としての権利を持っています。
そのため、自分の持分割合が大きくても権利が小さい人を邪魔することはできません。
なので、共有名義の土地はトラブルが多くなりがちです。
持分がわからない時の対処法
持分がわからない場合は、土地の登記簿を確認するのが一番確実です。
登記簿とは、法務局に保管されている土地の情報や権利を示す記録のことです。
手数料600円を支払えば、登記簿謄本や登記事項証明書として入手できます。
登記簿を確認すると、単独名義の場合は所有者として、共有名義の場合は共有者としてそれぞれの氏名が記載されています。
また、共有名義では持分割合も記載されています。
ただし、相続で共有名義になってから相続登記を済ませていない場合は、登記簿を見ても亡くなった所有者の情報が書かれているだけです。
相続の場合は、相続が開始された時点の法定相続分か、遺産分割協議で決まった相続分が、各相続人の土地の持分となります。
自分の持分を売る方法
土地は1つでも権利が持分に応じで分かれているため、自分の権利だけ他の人に売ることはできます。
また、自分の持分を売るだけなら他の共有者の同意はいりません。
売却の手続きも通常と変わらないので、売買契約を結んでから売却代金の受け渡しと同時に所有権の移転を登記する流れです。
しかし、土地全体を自由に使えない持分を、誰が買ってくれるでしょうか?
一般的には、自由に使えない土地の持分だけを買い取る人は少なく、ほとんどの持分の売却は共有者同士で行われます。
なお、相続の場合は遺産分割協議をしないと持分が確定しないので、共有名義は暫定的でしかありません。
なので、最終的な持分は協議次第で変わります。
持分が売買されるのではなく、持分と他の相続財産が交換されるなど、共同相続人の話し合いで柔軟に行われます。
許可なく持分を売るとどうなるか
土地が複数の相続人に相続されると持分が登記されてなくても、相続権によって各相続人には決められた相続分の持分があります。
その場合、各相続人は第三者に相続分の一部を譲渡できます。
では、遺産分割協議の前に持分の土地を勝手に第三者へ売却してしまうとどうなるのでしょうか?
まず、相続分全体を他の相続人に無断で第三者に譲渡したときは、譲渡されてから1ヶ月以内なら他の相続人が相当の対価で取り戻す相続分取戻権があります。
この相続分取戻権は、第三者に相続分が譲渡されることで遺産分割協議に第三者が介入してくるのを防止する役割があります。
この相続分取戻権で、相続分に含まれる土地の持分も取り戻すことができます。
他に、相続分の中で土地の持分だけが第三者に売却された場合、相続分取戻権で他の相続人は持分を取り戻せるのでしょうか?
譲渡されたのが相続分全体ではなく、特定の不動産の持分に過ぎない時は、相続分取戻権で取り戻すのは難しいでしょう。
そのため、土地の持分だけ第三者に売却されてしまった時は、その第三者から持分を買い戻すしか方法がなくなります。
こういった問題が起こることはあまりありませんが気をつけましょう。
分筆して売る方法
分筆とは、1つの土地を2つ以上に分けてしまうことです。
分筆された土地は、それぞれに所有権がある2つ以上の土地になります。
共有名義の土地を分筆する時は、持分に応じた面積で分け合って単独の土地にするのが一般的です。
分筆前:1つの土地⇒共有者全員の共有名義
分筆後:複数の土地⇒個人の単独名義
分筆をすると、独立した単独名義の土地が複数できます。
そのため、共有する土地ではなくなるので売却も自分の意思だけで可能になります。
土地の面積はどのように分けたらいいか?
持分の割合に応じて土地の面積を分けるので、どうやって境界線を引くかで土地の価値が変わってきます。
そのため、分筆後の土地の価値が持分を同じにならなければ納得できないでしょう。
例えば、持分が1/2ずつで単純に土地の面積が半分になるように分筆すると、分筆した後の片方の価値が下がるようではトラブルになるということです。
したがって、面積を単純に分けることは簡単ですが、価値を均等に分けるのは難しいということです。
分筆をする手順や流れ
分筆には手順があるので仕組みを理解していないと混乱してしまいます。
また、分筆しただけでは個人所有の土地を分けれるわけではありません。
① 測量と境界確定
分筆すると新たに境界が発生するので、境界線の確定が必要。
土地家屋調査士が面積を正確に測って、境界杭を設置します。
測量図を作ってもらう必要がありますが、費用は50万程度です(土地の広さ次第)。
② 分筆登記申請
分筆登記は、共有者全員で行う必要があります。
何故かというと、分筆しても土地の権利は共有名義のままだからです。
分筆登記を土地家屋調査士に依頼すると約5万円程度必要です。
③ 所有権移転登記
分筆登記直後は、分筆後の土地1つずつが共有者全員の名義になっています。
それぞれの土地の持分も分筆前と変わらないので、土地の持分を交換すると単独名義の土地にすることができます。
費用は土地価格の0.4%に相当する登録免許税と司法書士報酬5万円程度が必要です。
分筆登記と所有権移転登記が終われば分筆後の土地は個人所有になります。
売却後に持分割合で分ける方法
ここまでの方法は、主に共有名義人で売却に対して意見が分かれている時の方法です。
反対に全員が売却に同意しているケースは比較的手間も少なくなります。
ただし、全員が所有権を持っていることが必要な時もあります。
この場合に必要な書類を以下で説明しておきます。
売却に必要な委任状
共有名義の土地を売るには、全員が合同してから売る手順が原則です。
手続きには共有者全員が立ち会って売買契約書に署名と実印で押印をします。
さらに、印鑑証明、住民票、本人確認書類などをそれぞれ用意します。
しかし、中には遠くに住んでいる、高齢で動けない、日程が調整できないといった場合もあるでしょう。
そんな時に誰かが代表して売買するために、他の人からの委任状を用意します。
委任状があれば、与えられた権限の範囲内で本人に代わって売却手続きが可能です。
共有人全員が1人に全権委任する委任状を作れば1人でも売却手続きができます。
なお、委任状と添付書類がそろって手続きする上で問題のない状態でも、委任した共有者本人の売却意思は確認されます。
代理売買の委任状
委任状とは、各共有人から手続きを代理して土地を売る人に対して、代理権を与えるための書面です。
口約束でも委任はできますが、書面に残さないとトラブルになるので必ず委任状を作成します。
なお、委任状のフォーマットは決まっていないので、書き方次第ではどのようにも変わりますが、必要な内容は次のようなものです。
・ 委任者の住所氏名と受任者の住所氏名押印
・ 委任者が受任者に委任する旨
・ 受任者に委任する権限
・ 土地の表示
委任者が受任者に委任する旨は「○○は××に下記土地の売却を委任する」などとすればいいでしょう。
委任の事実が分かれば大丈夫です。
なお、受任者に委任する権限については、すべてを任せるなら「一切の権限を委任する」と記載します。
特定の権限を委任するなら、その権限を個別に記載します。
特定の権限とは、売却価格の決定、売買契約の締結、手付金・違約金の額、手付金・売却代金の受領、決済日や引き渡し日の決定、登記手続き、に関する権限などです。
土地の表示は、売却の対象になる土地の、所在、地番、地目、地積などのことです。
登記簿に記録されている情報をそのまま使います。
また、他に記載するとすれば、受任者に禁じる行為や委任契約の有効期間などです。
代金分配と委任状
例えば売却代金の受け取りで、委任状を使って受任者に受領させる権限を与えると、各持分の売却代金は委任者に直接支払われないで受任者が貰います。
しかし、持分の売却代金を全てもらえたわけではなく、代わりに受け取ってもらうだけなので贈与にはなりません。
もし、手付金や売却代金の受領が心配なら、受任者に受けとりの権限を与えずに各共有人に振込などで直接支払う決済も可能です。
その場合は、事前に各委任者が作成した領収書を用意して、買主には全員分の領収書を渡すことになります。
この場合は戸籍の附票といって、住所移転の履歴を確認できる書類があるので本籍地の役所で交付してもらい添付します。
共有名義の不動産を売却する注意点
ここからは、売却時でその他の注意点について説明していきます。
利益も経費も持分に応じて分割する
売却が共有者全員の合意でされる以上、売却して得た代金や経費はすべて持分に応じて全員に分割されます。
そのため、利益が出たときに課税される譲渡所得税も、共有者全員が確定申告して納税することになります。
これは相続時に代表者を決めて売却してから代金を分割した場合も同じです。
代表者の名義で売却されるとしても、実質的には共同で売却しているのと同じなので代表者だけが譲渡所得税を負担するようなことはありません。
無償で名義変更すると贈与になる
共有名義の場合、共有者同士で持分を売買しなくても誰か1人の名義に変更してから、他の人に売ってお金を分けたほうが簡単です。
これは相続時に代表者名義で登記してから、売却代金を分ける方法と考え方は同じです。
ところが、相続が絡まない場合に名義変更してしまうと、それは贈与となり贈与税の対象になってしまいます。
贈与税の税率は高いですし、共有者同士の売買では発生しない物が税金で引かれるため、贈与にすると結局損をします(年間で110万円以内の贈与なら非課税です)。
そのため、共有者全員の合意が取れているのなら委任状による委託がいいでしょう。
共有名義の不動産売却で必要なもの
必ず共有名義者全員の承諾が必要です!
・ 不動産の登記済権利書、または登記識別情報
・ 土地測量図、境界確認書
・ 共有者全員の、身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票
共有名義になっている不動産を丸ごと売却するには、必ず上記書類と共有名義者全員の承諾(実印の押印、契約書への記名)が必要です。
勝手に共有者の一人が土地を売却することはできません。
ここまで、共有名義の不動産の売却方法について解説してきました。
共有名義の不動産を売却するのは手間と時間が必要なので途中でミスをしないようにしっかりと確認しておきましょう。
また手続きを簡単に素早く行いたいなら不動産会社選びが重要です。
いくつかの不動産会社を比較するなら、不動産一括査定サイトを使ってみましょう。
不動産一括査定サイトについて詳しくは、下記の「不動産一括査定サイトとは?」をご覧下さい。