マンション売却が決まったら、不動産会社に査定を依頼して、査定額を算出してもらいます。査定額がそのまま売り出し価格になるとは限りませんが、一つの目安にはなります。
この記事では、査定額の算出においてどのようなポイントが重視されるのかを説明します。
「立地」や「管理」などが査定に大きく影響
マンションの査定において、不動産会社はさまざまな観点から査定を行います。
査定に影響を及ぼすポイントを以下に列挙しました。一つずつ詳しく説明します。
立地
査定価格は「立地」に大きく影響されます。立地は「交通アクセス」、「周辺環境」という2つの要素に分けられます。
交通アクセス
交通アクセスの良し悪しは、マンションの資産価値を決める上で重要な要素です。交通アクセスが良く、高額査定につながるマンションの条件は次の通りです。
- 最寄駅が近い
- 都心に近い
- 徒歩圏内に複数の駅がある(JRや私鉄、地下鉄など)
もっとも大きなポイントはやはり、最寄り駅までの距離です。目安は「駅から徒歩10分以内」で、徒歩10分を超えるとマイナス要素になってしまいます。
最寄り駅がどのような駅かという点も査定のポイントです。都心に近い駅であれば、当然ながら査定には有利に働きます。
規模の大きな駅の近くというのも、査定額が上がる要素です。たとえば、新幹線が停まる駅や、特急や快速が停まる駅など、いわゆる主要駅である場合は、プラスの要素として加味されるのが一般的です。
徒歩圏内に複数の駅がある場合も、査定ではプラス要素として評価されます。たとえば、JRだけではなく私鉄の駅も近い場合や、さらには地下鉄の駅も近い場合など、徒歩圏内に駅が多ければ多いほど立地が良いと判断されます。
周辺環境
マンションの立地に関しては、周辺環境も査定に大きく響きます。治安の良し悪しに加えて、生活する上で必要な施設が徒歩圏内にあるかどうかが問われます。
施設の有無が査定のポイントとなるのは、主に次のような施設です。
- 買物施設(スーパーマーケット・コンビニエンスストアなど)
- 公共施設(市区町村役場・郵便局・図書館など)
- 教育施設(学校・幼稚園・保育所など)
- 医療機関(病院・クリニックなど)
- 公園
特に子育て世代が多いエリアであれば、学校や病院、さらには公園などがあるかどうかが影響する傾向があります。
管理
次に、同じく査定に大きな影響を与える「管理」について見てみましょう。
買主がマンション購入を決める際、管理状態がいいかどうかは重要なポイントです。管理状態のよいマンションは高額査定につながる傾向があります。
管理状態が良いというのは、具体的にいうと「管理組合がきちんと機能しているかどうか?」ということです。
管理組合の意識が高く、組合としての機能を十分に果たしている場合、長期修繕計画が滞りなく、そして適切に進められています。定期的なメンテナンスを行って、マンションが良好な状態を保っていることでしょう。
積み立てている修繕費が適切に使われ、マンションの資産価値が保たれているかどうかは重要なポイントです。
また管理組合が機能しているということは、居住者同士の関係も良好で、しっかりとしたコミュニティが形成されていると推測できます。
マンションに長く住む以上、居住者同士の関係は日々の暮らしに影響を与えます。
管理組合が機能しているかどうかを第三者が知るには、共有エリアの掲示板が一つの目安になります。
- 機能している → 美しく保たれ、さまざまな情報が掲示されている。
- 機能していない → 薄汚れており、古い掲示物がそのままになっている。
ここに挙げた例はあくまで一つの目安ですが、管理組合の状態を知る判断基準の一つになります。マンション売却を決めたら、客観的な目で一度チェックしてみるといいでしょう。
掲示板付近の清掃や整理整頓が行き届いており、新しい情報が充実している場合は、高額査定につながるポイントの一つになることでしょう。
築年数
マンションの築年数も、当然ながら査定結果に影響します。
マンションが建ってから日が浅い、いわゆる「築浅」物件は、高額査定につながる傾向があります。一方、年数が経って「築10年」「築20年」となっていくにつれて、マンションの査定額は下がる傾向があります。
ただし、建築から何年以内のマンションを築浅とするかは、実は定義は決まっていません。不動産会社ごとに築浅と呼ぶ年数は変わります。
多くの場合、「3年以内」もしくは「5年以内」を築浅と定義しています。5年を超えたものに関しては、築浅として認識されないと考えておくとよいでしょう。
さらに、マンション売却における築年数に関して、知っておきたいことがあります。それは、建てられた年数によっては、現在の耐震基準を満たしていないマンションがあるということ。満たしていない場合は、査定額が下がる傾向にあります。
日本では数年おきに、マンションの建築基準が変わります。そのため、1981年6月1日以前に建築確認を受けたマンションは、新耐震基準に適合していない可能性があります。
築40年近いマンションを売りたいと考えている場合は、何年に建築確認を受けたかを確認しておきましょう。新耐震基準に適合していない場合は、査定額が下がる可能性があることを頭に入れておく必要があります。
部屋(広さ・間取り)
マンション売却において、「部屋」も査定に大きく影響するポイントです。具体的には、「広さ」「間取り」が査定で主に見られるポイントです。
当然ながら、部屋が広いと査定額は高くなります。
間取りも住み心地を左右する要素ですから、査定額に影響します。
従来はマンションの間取りというと、いわゆる「田の字型」が主流でした。田の字型というのは、以下の画像のように、玄関から縦長のLDK(リビング・ダイニング・キッチン)と居室に向けて廊下が伸び、その左右に居室があるタイプの間取りです。
マイナビニュースより引用
ところが「田の字型」はリビングの奥行きが深くなるため、「リビング全体に日が当たりにくい」というデメリットも指摘されるようになってきました。
そこで現在では、リビング全体に日光が差し込みやすい「横長リビング」を取り入れた間取りが人気を集めています。横長リビングを採用した間取りであれば、査定額がアップする可能性があります。
方角
方角も、マンション査定で影響を与えるポイントです。なぜなら、方角によって日当たりが異なるからです。
マンションの方向には、「東・西・南・北」の4種類あります。窓やバルコニーがどちらの方角を向いているかによって、「東向き」「西向き」などと呼びます。
一般的には、日当たりのよい南向きマンションが人気です。南向きの場合は高額査定につながります。続いて、朝日が差し込む東向きが選ばれる傾向にあります。
マンションの方角でいえば、西日が差し込む西向きマンションは、一般的には査定でマイナスに働くと考えられています。西日が差し込むことで夏の暑さが厳しく、床や壁、家具などが日焼けする可能性もあるからです。
ただし、西向きだからといって、必ずしも査定額が低くなるとは限りません。立地が良かったり角部屋であったりする場合は、他の点でデメリットを補えるからです。
眺望
部屋やバルコニーからの眺望の良し悪しも、査定の際に考慮されるポイントの一つです。
特に夜景がきれいに見える場所にあるマンションの場合、高層階に行けば行くほど、基本的には高額査定になります。高層階の場合、高層階専用のエレベーターが完備されていれば、さらにプラス要素として働くでしょう。
ただし眺望に関して注意したいのが、近隣における今後の建設予定です。
都心部を中心に、現在では高層マンションの建設ラッシュが続いています。中には、視界をさえぎる形で高層マンションが建つことが決まっているケースもあるでしょう。
その場合、現在の眺望とは様変わりする可能性もあります。その分、査定ポイントが下がる傾向にあることも頭に入れておきましょう。
部屋の使用状況
部屋の使用状況も、査定の際のチェックポイントとなります。
壁や床などに目立った傷や穴などがある場合は、査定額を決める際にマイナス要素となります。簡単に補修できるなら、査定前に補修しておいたほうが良いでしょう。
また、キッチンやトイレ、浴槽など、いわゆる「水回り」が築年数と比較して汚れている場合、査定においては不利になります。できる限り査定前に清潔な状態に整えておくようにしましょう。
なお、リフォームに関しては慎重になる必要があります。リフォームをしたからと言って、必ずしも査定で有利に働くとは言えないからです。
たとえば、50万円かけてリフォームしたとしても、査定額が50万円以上アップする保証はありません。本当に必要かどうかを判断して、リフォームを行うか否かを決めましょう。
まとめ
マンション売却で査定に影響するポイントを見てきました。立地や管理、築年数、部屋の広さ、そして間取りなどが査定のチェック項目です。日当たりを左右する方角や、さらには眺望も査定で見られるポイントです。
ただし、各ポイントはあくまで「たくさんある査定ポイントの一つ」でしかありません。
たとえば、新しいマンションでないとしても、近年人気の学区として注目を集めているエリアのマンションであれば、比較的高い査定額がつく可能性もあります。また、部屋がさほど広くないにしても、管理状況が良く居心地の良いマンションであれば、高い査定額がつくかもしれません。
マンションの査定の本来の目的は、さまざまな観点から物件の資産価値を判断し、適切な価格をつけることにあります。そのためには、誠実な姿勢で査定を行ってくれる不動産会社に査定を依頼することも大切です。