マンション売却の際、1階の部屋だと売れないのでしょうか?敬遠されることが多いのは事実ですが、1階ならではのメリットもあり、子育て世帯や高齢者世帯からは一定のニーズがあります。
1階の部屋ならではのメリットやデメリットを整理しておきましょう。
マンション1階の部屋のデメリット
マンション1階の部屋には、デメリットが存在するのは事実です。まずはデメリットから見てみましょう。
外から侵入しやすい(防犯上の問題)
1点目は、「外から侵入しやすい」という、防犯面の問題です。
上層階が必ずしも安全というわけではありません。とはいえ1階は、上層階と比べて侵入しやくなります。女性の一人暮らしの場合、ベランダに下着を干しにくいため、1階を敬遠する方もいるでしょう。
ただし1階でも、オートロック付きや24時間警備サービス付きの物件であれば、防犯上の問題はある程度クリアできます。また、窓からの侵入を防ぐための防犯対策をしっかりしているマンションなら、購入希望者に対して十分アピールしましょう。
外からの人目が気になる(プライバシー問題)
2点目は、「通りからの人目が気になる」という、プライバシー面の問題です。
植栽などの目隠しがない場合、カーテンを開けると歩行者や車から中が丸見えになってしまいます。外を見た瞬間、歩行者と目が合うこともあります。
視線を避けるために分厚いカーテンを閉めたままでは、部屋の中が暗くなります。とはいえ、レースカーテンでは透けてしまうため、やはり中が見えてしまいます。
常に人通りを気にしなくてはならないのは、1階のデメリットと言えるでしょう。
ただし近年では、目隠し機能を持つ機能性カーテン(ミラーレースカーテン)も増えてきました。
ミラーレースカーテンは、特殊な素材を使うことで、太陽光を鏡(ミラー)のように跳ね返す効果を持っています。ミラーレースカーテンをつければ、光を採り入れて明るさを保ちつつ、視線をさえぎることが可能です。
実際に使用中であるなら、内覧の際に購入希望者に見せるようにしましょう。実際の目隠し効果が伝われば、購入希望者のマイナスイメージもやわらぐはずです。
日当たりが悪く、洗濯物が乾きにくい
3点目は、「日当たりが悪く、洗濯物が乾きにくい」という点です。
周囲に高い建物があると、日中の短い時間しかベランダに日光が当たりません。そのため洗濯物を干しても乾きにくく、主婦にとってはストレスを感じる原因になってしまいます。
洗濯は、毎日の暮らしにかかわる問題です。しかも冬場はなお乾きにくいことを考えると、1階の日当たりの悪さはマイナスポイントになります。
ただし、1階の部屋でからといって、必ずしも日当たりが悪いわけではありません。中には、日当たりが確保できている部屋もあることでしょう。もし日当たりが良いのであれば、その点はマンション売却の際にしっかりアピールすることをおすすめします。
車の騒音や排気ガスが気になる
4点目は、「車の騒音や排気ガスが気になる」という点です。
大通りに面しているマンションであれば、すぐ近くを大量の車やトラックが行き来します。騒音や排気ガスが気になって、窓が開けられない部屋もあることでしょう。
洗濯物に関しても、排気ガスで汚れるのが気になって、部屋干しばかりになるかもしれません。
ただし騒音に対しては、防音カーテンや二重サッシなどの騒音対策グッズもあります。実際に活用しているなら、購入希望者に防音効果を実感してもらうのも一つの手段です。
蚊やゴキブリなどの虫が多い
5点目は、「蚊やゴキブリなどの虫が多い」という点です。
もちろん2階より上のフロアで虫が出ないというわけではありません。とはいえ、1階には植栽がある関係で、夏は蚊が出やすくなります。外から入りやすいという意味で、ゴキブリも出やすい傾向があります。
ただし近年では、虫対策のグッズも増えています。効果のあるグッズがあれば、内覧のときにさりげなく伝えましょう。具体的な対策を伝えると、購入希望者もある程度の安心材料になります。
台風や集中豪雨のとき、浸水が心配
6点目は、「台風や集中豪雨のとき、浸水が心配」というデメリットです。
マンションの立地にもよりますが、2階以上の部屋と比べると、1階の部屋は浸水のリスクが高くなります。
近年の異常気象によって、大型台風や集中豪雨が増えています。大雨による洪水が起こると、1階は床下浸水を心配しなくてはなりません。
ただし基礎部分が高ければ、豪雨が降ってもすぐに浸水するわけではありません。また、水害リスクがどれぐらい高いかは、地域によっても異なります。
国土交通省のホームページには、水害リスクの高いエリアが表示されるハザードマップが掲載されています。マンションの所在地がエリア外である場合は、参考資料の一つとして購入希望者に提示するのも一つの手段です。
(参考)国土交通省ホームページ:「洪水浸水想定区域図・洪水ハザードマップ」
湿度が高く、結露しやすい
7点目は、「湿度が高く、結露しやすい」という点です。
1階の部屋は地面に近い分、2階以上の部屋と比べると湿気の悩みが多くなります。
湿度が高いと、結露やカビの原因になります。そのため、湿度を気にして1階を敬遠する買主がいるのも事実です。
ただし、1階の部屋が必ずしも湿度が高くなるわけではありません。住んでいて気にならないなら、内覧時に購入希望者に感想として伝えると良いでしょう。
また、断熱窓が使われているなら、結露対策になります。あわせて伝えるようにしましょう。
冬場、冷気が上がってきて底冷えする
8点目は、「冬場、冷気が上がってきて底冷えする」という点です。
1階の部屋は地面に近い分、冬になると底冷えする傾向があります。
ただしその分、夏場は比較的涼しく過ごせる傾向があります。また、床下に断熱材が敷き込まれていたり、床暖房完備だったりする場合は、冬の底冷えもさほど気にする必要はないことを伝えましょう。
上から布団のホコリやタバコの灰などが落ちてくる
9点目は、「上から布団のホコリやタバコの灰が落ちてくる」という点です。
1階の場合、上の階から物が落ちてくることがあります。特に、布団をたたいたときに出るホコリや、ベランダで吸ったタバコの灰が落ちてくるのは、あまり気分のいいものではありません。
ただし、管理組合が十分に機能しているマンションであれば、相談してみると解決する場合もあります。
マンションに住む際、快適に住み続ける上で、管理組合も重要な要素の一つです。管理組合が優れていることを伝えれば安心材料の一つとなり、購入の決め手の一つになりえます。
マンション1階の部屋ならではのメリット
ここまでは、1階のデメリットを見てきました。マンション1階には、当然ながら1階ならではのメリットも多数あります。購入希望者にメリットをアピールできるよう、一つずつ確認しておきましょう。
専用庭やカーポート付きの物件がある
まず1階の部屋のメリットとして挙げられるのが、「専用庭やカーポート付きの物件がある」という点です。
専用庭があれば、ガーデニングや家庭菜園ができますし、夏になれば子ども用のビニールプールを出すこともできます。中にはバーベキュー可能なマンションもありますので、家族団らんや家族同士の集まりを楽しむこともできます。
専用庭に物置があったり、設置可能なスペースがあったりすれば、子ども用のビニールプールや浮輪、バーベキューセットなど、季節ものの収納に役立ちます。
このように、マンションでありながら一戸建て感覚で使えることは、ファミリー層に対しての大きなアピールポイントになります。購入希望者にきちんと伝えるようにしましょう。
またカーポートがあれば、車や自転車を部屋の近くに置くことができます。防犯上も安心ですし、重い荷物の運搬に便利です。子どもや高齢者がいる場合は、乗り降りにも便利ですので、しっかりアピールしましょう。
階下への騒音に神経質にならなくていい
2点目は、「階下への騒音に神経質にならなくていい」という点です。
特に小さな子どもがいる場合、走り回ったり、飛んだり跳ねたり、さらにはおもちゃを床に落としたリと、何かと階下に響く音を出しがちです。
マンションで生活するにあたって、同じマンションに住む住人とのトラブルは避けたいことの一つです。一日中ずっと階下の住人に対して気を遣っていると、次第にストレスを感じてしまいます。
その点、1階なら下に部屋がありません。階下に響く騒音に神経質にならなくてもいいのは、1階ならではのメリットです。特に子育て世帯には、魅力的なポイントとなりますので、しっかり購入希望者にアピールしましょう。
階段やエレベーターを使う必要がない
3点目は、「階段やエレベーターを使う必要がない」という点です。
タワーマンションの高層階や、戸数が多いマンションの上層階に住むと、なかなかエレベーターが来ないこともあります。特に朝の通勤・通学ラッシュ時は大変混み合うため、毎日のストレスの原因にもなりかねません。
また、いざ出かけようとすると定期点検中でエレベーターの使用が制限され、思いのほか移動に時間がかかるケースもあります。
このように外に出るまでに時間がかかることが重なると、外出がおっくうになり、部屋にこもりがちになる可能性もあります。
1階なら、階段やエレベーターを使う必要がありません。外に出やすいのは、1階ならではのメリットです。
重い荷物の運搬も便利
4点目は、「重い荷物の運搬も便利」という点です。
上層階の場合、特に階段しかなければ、妊婦さんや子連れのママ、足の不自由な高齢者などは、荷物の運搬に手間がかかります。
子育て中であれば、おむつやミルクの缶など、かさばる荷物が多く、運ぶのが大変です。
ましてやベビーカーと重い荷物を階段で運ぶとなると、かなり重労働です。子どもが眠っていれば、抱っこしながら階段をのぼらなくてはいけないこともあるでしょう。
高齢者の場合も、米やペットボトルなどの重い荷物を階段で運ぶのは大変です。ショッピングカートを持ち上げて、上層階まで運ぶのはかなりの重労働です。
その点1階であれば、エレベーターや階段を利用する必要はありません。部屋までが近い分、荷物の運搬も便利です。
またゴミ出しの際も、1階であれば同じ階にゴミ捨て場があります。すぐに置きに行くことができるので、小さな子どもが部屋にいる場合も、さっと出しに行くことができます。
ポストも近いので、新聞や郵便物を取りに行くのが楽なのも1階ならではのメリットです。毎日のことなので、さりげなく便利な点として伝えると良いでしょう。
子どもの落下事故の心配が少ない
5点目は、「子どもの落下事故の心配が少ない」という点です。
残念ながら、小さな子どもがベランダの柵を乗り越えて転落する事故が、後を絶ちません。安全対策をしていても、小さな子どもが家にいると常にリスクがあることを頭に入れておかなくてはなりません。
その点、1階であれば地面に近い分、子どもがベランダや窓から落ちて、大ケガをするリスクはぐっと下がります。また子ども自身の落下だけではなく、子どもが誤って階下に物を落とす心配も減ります。
子どもは好奇心旺盛です。目を離したすきに、ベランダにある洗濯ばさみやハンガーなどを面白がって投げ落とす可能性があります。手に持っていたおもちゃを、うっかり落としてしまうこともあるでしょう。
階下に置いていた車などを傷つけることがあれば、弁償が必要になることもあります。1階であれば、階下の住人に迷惑をかける心配が減るので、子育て中の母親にとっては安心材料の一つになります。
万が一の地震の際も、外に逃げやすい
最後の6点目は、「万が一の地震の際も、外に逃げやすい」という点です。
万が一、大規模な地震にみまわれた場合、しかるべきタイミングで屋外に避難することになります。高層階に住んでいてエレベーターが止まっていたら、混雑した階段を駆け下りなくてはなりません。
ところが1階の場合、地続きで外に出ることができます。万が一ドアが歪んで開かない場合も、窓から外に出ることも可能です。
小さな子どもがいるご家庭や、足の不自由な高齢者がいるご家庭にとっては、万が一の際も外に出やすい点はメリットと言えます。
1階は、子育て世帯や高齢者世帯にメリットが多い!
ここまで1階のメリットとデメリットを見てきました。挙げた数だけ見れば、デメリットが多いように見えます。とはいえ、すべてのマンションに当てはまるわけではありません。
そしてデメリットがあるとしても、機能性カーテンや二重サッシなどを使うことで、デメリットをカバーすることも可能です。既に対策がしてあるなら、購入希望者に分かりやすく伝えるようにしましょう。
また、1階ならではのメリットもたくさんあります。特に、子育て世帯や高齢者世帯にとって魅力的なメリットがたくさんあります。
1階というと敬遠されることが多いのも事実ですが、ターゲットを定めれば1階の部屋も十分に売れるのです。
子育て世帯と高齢者世帯、それぞれの特徴や傾向について、詳しく見てみましょう。
子育て世帯の場合
子育て世帯の場合、一戸建てを購入したいと考えていても、資金的余裕がない場合もあります。マンションであっても、専用庭がついていれば、一戸建ての感覚で住むことができます。
また、マンションというと騒音トラブルがしばしば話題にのぼりますが、1階であれば階下の住人を気にする必要はありません。できるだけのびのびと子どもを遊ばせてあげたい親にとって、1階というのは魅力と言えます。
一日中、子どもとマンションで一緒に過ごす母親自身にとっても、トラブルの心配が減るのは、快適に暮らす上で重要なポイントです。
高齢者世帯の場合
高齢者世帯の場合、子どもが独立した後であれば、一戸建てのような広いスペースは必要ありません。
戸建て住宅を管理するのも大変です。定期的なメンテナンスも必要ですし、広さ相応の維持費もかかってきます。
高齢者にとって、必要十分な生活スペースがあり、基本的な管理は管理会社が行ってくれるマンションは、便利な存在です。1階であれば簡単に外に出られるので、外出が面倒になる心配もありません。
特に、足腰が弱っていたり、慢性的なひざの痛みがあったりする場合、階段の上り下りが必要ない1階は便利です。
これまでは一戸建てに住んでいた高齢者世帯であっても、1階ならではのメリットを丁寧に伝えれば、納得して購入する可能性が高くなるでしょう。
まとめ
一般的には、マンション売却において1階の部屋は「売りにくい」と思われています。
たしかに、防犯面が気になる単身女性や、子どものいない夫婦にとっては、1階は敬遠したくなる物件である傾向はあります。
ただし、子育て世帯や高齢者世帯にとっては、毎日の暮らしを快適に過ごす上で、たくさんのメリットがあります。不動産会社にも丁寧にアピールポイントを伝えて、適切な売却活動を進めましょう。
伝えた内容が、チラシや営業活動に反映されるよう、信頼できる不動産会社を選ぶことも重要です。