マンションの査定には、不動産会社に直接依頼する方法以外にも、不動産の一括査定サイトを利用する方法があります。近年増えている不動産の一括査定は便利ですが、デメリットはないのでしょうか?
この記事では、知っておきたい不動産一括査定に潜む罠について、解説します。
不動産の一括査定の仕組みとは?
まずは、不動産の一括査定とはどういうものなのか見てみましょう。
不動産の一括査定とは、ウェブサイトを通じて、複数の不動産会社に同時に査定が依頼できる仕組みです。
近年、不動産の一括査定を扱うサイトが増えました。インターネットで「不動産 一括査定」と入力して検索すると、ランキング形式や一覧などの形で、多くの不動産一括査定サイトが見つかります。
それぞれ内容は少しずつ異なりますが、基本的には所定のフォームに物件情報を入力して送信します。すると、複数の不動産会社から査定結果が届くという流れが一般的です。
不動産の一括査定を利用する最大のメリットは「手間が省ける」という点です。
本来であれば、複数の不動産会社の査定を受けるには、それぞれの会社に連絡する必要があります。ところが不動産の一括査定を利用すれば、フォームに必要事項を入力するだけで、複数の査定結果を受け取ることができるのです。
不動産の一括査定サイトは無料で利用できます。
手軽に色々な査定結果を見てみたい場合、不動産の一括査定を利用してみるのも一つの方法です。
一括査定の価格は、相場より高くなる?
便利に活用できる不動産の一括査定ですが、利用する上で知っておきたい注意点があります。
それは、不動産の一括査定を利用すると、本来の相場よりも高い価格を業者から提示される可能性が高いという点です。
マンション売却を考えている人にとって、高く売れるかどうかは大きな関心事です。そこで不動産会社は、少しでも高い査定価格を提示することが、ライバル会社に抜きん出るために必要と考えます。結果として、相場より高い査定価格を算出する不動産会社が多くなるのです。
不動産会社が、あえて高い価格を提示してでも顧客を獲得しようとするのは、もう一つ理由があります。それは、一括サイトに参加するにあたってかかった経費を回収する必要があるからです。
不動産会社は査定依頼を受けるたびに、たとえば1件1万円などの形で、一括査定サイトの運営会社に手数料を支払っています。
費用負担を回収するには、多くのライバル会社の中から自社を選んでもらう必要があります。そのため相場より高い価格を提示してでも、必死で契約をとろうとするのです。
もし、相場よりもかなり高い査定価格を提示した不動産会社を選んだ場合、どうなるでしょうか?
査定価格通りに売れるなら、もちろん問題はありません。ただし、実際には、相場より高い価格で売り出せば、どうしても売れ残ってしまいます。そして結局は、価格を下げざるを得なくなるのです。
マンションを売却するなら、誰もが高く売りたいと考えることでしょう。でも、一括査定で相場より高い査定結果が出ても、安易に飛びつくのは考えものです。結果的にマンション売却期間が長引き、想定以下の売却額になるリスクがあることを、知っておいたほうが良いでしょう。
一括査定を利用するときは?
意外と知られていない一括査定のリスクについて見てきました。では、リスクを回避しながら不動産の一括査定を利用するには、どうすればいいのでしょうか?
大切なポイントを2つ紹介します。
1. 査定価格の根拠を聞く
高い査定価格を見ても、価格だけに惑わされてはいけません。なぜその価格で売却できるのか、査定価格を算出した根拠を不動産会社に聞きましょう。
さらにマンションを売り出すにあたって、どのような販促活動を行うのかを聞くことも大切です。レインズに登録するだけなのか、チラシなどの広告を使うのか、他のポータルサイトにも物件情報を掲載するのかなど、あわせて確認しましょう。
2. 信頼できる業者かどうかを見る
一括査定を利用する際には、信頼できそうな不動産会社かどうかを見極めることも大切です。査定価格の根拠を聞くときにも、誠実な姿勢で対応してくれているかを冷静に判断しましょう。
マンションを売却する側は当然ながら素人です。一方、不動産会社は不動産事情に精通した専門家です。中には、もっともらしく聞こえる根拠を作り上げて、売主を納得させようとする悪徳な不動産会社もあるかもしれません。
マンション売却には、不動産会社の誠実なサポートが欠かせません。相場より高い価格で売り出して、なおかつ不動産会社の姿勢にも問題があるなら、スムーズな売却は望めません。
くれぐれも提示された価格だけに惑わされるのではなく、対応を見て、信頼できる業者かどうかを見極めるようにしましょう。
一括査定を利用してマンション売却を進めるのであれば、価格が高く、かつ説明に納得できる不動産会社を見極めて、1か月だけ専任媒介で依頼してみるのも一つの手段です。その間の対応を見て、契約を更新するか別の不動産会社に切り替えるかを判断すると良いでしょう。
(参考)マンション売却では一般媒介、専任媒介、どちらを選ぶべき?
まとめ
不動産の一括査定は、同時に複数の不動産会社に査定依頼ができる便利なシステムです。手間が省けるという点では、手軽に利用してみると良いでしょう。
ただし、複数の不動産会社が見積もりで競うことになるため、舞台裏では、し烈な「見積もり合戦」が行われていることを忘れてはいけません。何とか契約を獲得しようとして、相場より高めの査定価格を提示しているケースが考えられます。
物件の価値と見合わない価格で売り出せば、売れ残って売却期間が長くなる可能性があります。最終的には、値下げも視野に入れなくてはいけないでしょう。
不動産の一括査定を利用するなら、適正な値付けができ、なおかつ信頼できる不動産会社に頼むことをおすすめします。
最終的に、査定価格が適正かどうかは、不動産事情に精通していない素人では判断しきれません。不安を抱えながら売却活動を進めることになるのであれば、一括査定とあわせて、個別に地元の不動産会社に査定を依頼するのも良いでしょう。