マンション売却というと、「入ってくるお金」に意識がいきがちです。しかし、マンションを売却する際は、売主にも費用負担が発生します。想定外の出費に慌てずにすむよう、マンション売却にあたってどのような費用が発生するのか、一通り把握しておきましょう。
マンション売却にかかる費用一覧
マンション売却の際、売主が負担することになる主な費用は次の通りです。
- リフォーム費用
- ハウスクリーニング費用
- 仲介手数料
- 追加の広告費
- 登記費用(必要に応じて、司法書士への依頼費用)
- 繰上返済手数料
- 水道光熱費
- 各種税金
もちろん売主によっては必要のない費用もあります。まずは各費用の内容を確認して、必要なのか否かを明らかにしましょう。
必要であると分かった項目に関しては、あらかじめおおよその金額を把握しましょう。事前に心づもりをして予算として組み込んでおくことで、スムーズに一連の売却活動を進めることができます。
それぞれの費用の特徴
では、先ほど挙げた費用について、一つずつ詳しく見てみましょう。
リフォーム費用
まずは、リフォーム費用についてです。マンション売却にあたって、必要に応じてリフォームを行います。ただし、必ずしもリフォームが必要なわけではありません。その主な理由は次の通り。
- リフォーム工事に費用をかけても、その費用を丸ごと上乗せした価格でマンションが売れる保証はない。
- 中古マンションを購入する人の多くは、最初からリフォームやリノベーションを想定していることが多い。
とはいえ、内覧に訪れた人が不快に感じるほど、傷みや汚れが目立つ部屋であれば、話は別です。リフォームして、マイナスの印象を持たれないようにしておきましょう。詳しくは別記事(「マンション売却前にリフォームした方が良い?」)にまとめています。
繰り返しになりますが、費用をかけた分だけ上乗せして売れるわけではありません。必要最低限の箇所に絞ってリフォームを行いましょう。具体的には、壁紙やクロスの貼り替え程度で問題ありません。
参考までに、リフォーム・増改築の大型専門店「ナカヤマ」の場合、壁紙・クロス貼り替えの相場は次の通りです。(工事費・税込)
- 4.5帖・・・38,800円~
- 6帖・・・45,800円~
(参考)ナカヤマホームページ:「壁紙・クロス貼り替え」
ここに挙げた価格はあくまで一例です。部屋の広さや使う材質によって、価格は異なります。「クロス貼り替え+〇〇(地名)」とインターネット検索すれば、地域のリフォーム業者が見つかります。できれば複数の見積もりをとって、金額を比較しましょう。
ハウスクリーニング費用
次に、ハウスクリーニング費用について見てみましょう。ハウスクリーニングに関してもリフォームと同様に、必要と判断した場合のみ行います。
というのも、中古マンションの売却においては、現在の状態で物件をそのまま引き渡す「現状引き渡し」が原則のため。売却前に売主がハウスクリーニングをする義務は、基本的にありません。
ただし、中古マンションを売却する際は、内覧での印象が大きく影響します。スムーズに売却を進めるなら、できればきれいにしておいたほうが良いです。
ご自身で掃除すれば費用はかかりませんが、ダスキンをはじめとした業者に頼めば、当然ながら費用が発生します。
業者に頼むか否かを判断するには、「ハウスクリーニング費用に見合う効果があるのか?」という観点で考えましょう。費用に見合う効果がないのであれば、敢えてハウスクリーニングに費用をかける必要はありません。
その大きな判断基準となるのが、「水回りの状態」です。キッチンやレンジフード、浴室、洗面台、トイレなど、水回りの掃除がご自身で十分にできるのか、プロに頼んだほうが効率的できれいになるのかを判断しましょう。
水回りの印象は、そのまま家全体の印象に結びつくといっても過言ではありません。水回りは、頑固な汚れがこびりつきやすい場所。たとえば、キッチンの油汚れに浴室のカビ、洗面台の水垢、トイレの黄ばみなど……。こうした汚れが残ったままでは、内覧の際に良い印象を与えません。
こうした水回りの掃除は時間と手間がかかる割に、蓄積した汚れはとれにくい傾向があります。業者に頼めば、プロ用の洗剤や機材などを適切に使い分けながら、短時間で美しく仕上げてくれるのです。
たとえば、清掃会社の大手「ダスキン」の場合、水回り清掃費用の目安は次の通りです。
- キッチン・・・17,280円
- レンジフード・・・18,360円
- 浴室・・・17,280円
- トイレ・・・8,640円
- 洗面所・・・8,640円
(参考)ダスキンホームページ:「ハウスクリーニング」
ここに挙げた料金は、あくまで一例です。「ハウスクリーニング+〇〇(地名)」でインターネット検索をすると、お住いの近くにある業者を見つけることができます。まずはプロによるハウスクリーニングが必要な箇所を見極めた上で、費用を調べてみましょう。
繰り返しになりますが、売却のためにはきれいにするに越したことはありませんが、費用をかけたらキリがありません。費用対効果が期待できるかどうかを、冷静に判断することをおすすめします。
仲介手数料
仲介手数料とは、物件売買の仲介役をした不動産会社に対して支払う費用です。不動産会社にとっては、仲介手数料が主な収入源となります。
不動産会社は、仲介手数料を元手にして、マンション売却にあたっての広告費やポータルサイトなどへの情報掲載料、契約書作成費用などをまかない、マンション売却のサポートを行っています。
仲介手数料は、いわゆる成功報酬のため、買い手がつかずにマンション売却を断念した場合、仲介手数料は発生しません。売買が無事に成立すると仲介手数料が発生するため、売却のための費用として把握しておく必要があります。
仲介手数料は、次の通り上限額(税別)が定められています。
- 売買価格の200万円以下の部分・・・5%
- 売買価格の200万円超400万円の部分・・・4%
- 売買価格の400万円超の部分・・・3%
(参考)国土交通省ホームページ:「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
少し複雑になるので、具体的な売買価格をもとに説明します。
売買価格が200万円以下の場合
まずは売買価格が180万円の場合を見てみましょう。売買価格が200万円以下の場合は、5%で計算します。そのため仲介手数料の上限額(税別)は、次の通りです。
180万円 × 5% = 9万円
売買価格が200万円超400万円以下の場合
次に、売買価格が350万円の場合を見てみましょう。売買価格が200万円超400万円以下の場合は、200万円までの部分は5%、200万超400万円以下の部分は4%で計算します。そのため仲介手数料の上限額(税別)は、次の通りです。
200万円 × 5% + 150万円 × 4% = 16万円
売買価格が400万円超の場合
続いて、売買価格が3,000万円の場合です。売買価格が400万円超の場合は、200万円までの部分は5パーセント、200万円超400万円以下の部分は4%、さらに400万円超の部分は3%で計算します。そのため仲介手数料の上限額(税別)は、次の通りです。
200万円 × 5% + 200万円 × 4% + 2,600万円×3% = 96万円
ご覧のとおり、売買価格が400万円を超える場合、計算はやや複雑になります。そこで、簡単に仲介手数料の上限額を算出したい際は、次の簡易計算式を使うといいでしょう。
仲介手数料の上限額 = 売買価格 × 3% + 6万円 ※税別
先ほどの売買価格が3,000万円の場合だと、仲介手数料の上限額(税別)は、
3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円
とシンプルに計算できます。
ただしこの計算式で出てくる数字は、あくまで法律で定められている上限です。仲介手数料がこの額より低い分には、法律上何ら問題はありません。事前にどれだけの仲介手数料を支払うことになるのか、不動産会社にきちんと確認しておきましょう。
仲介手数料を支払うタイミングは、契約締結時に仲介手数料の50%を支払い、引き渡し完了時に残りの50%を支払うことが一般的です。ただし不動産会社との合意ができていれば、引き渡し完了時に全額を支払うケースもあります。
まとまった出費になるため、支払うことになる金額とタイミングについては、事前に確かめておきましょう。
追加の広告費
マンション売却にあたっては、折り込みチラシやポスティング、ホームページ掲載などの広告を活用します。広告費に関しては、仲介手数料に含まれています。基本的に売主が広告費を負担することはありません。
ただし売却活動を進めても、内覧が増えなかったり、内覧に来ても契約が決まらなかったりするケースもあります。売れない状態が長期化しているなら、何らかの対策を打つほうがベター。その一つの方法として、不動産業者から追加の広告を提案される場合があります。
説明をじっくり聞いた上で、効果が見込めると納得できれば、追加の広告費を支払いましょう。
ちなみに宅建業法では、売主が広告費を負担するのは「特別に依頼した広告」の場合と定めています。不動産会社が売主に無許可で広告を作成し、後から請求するのはNGです。
万が一、依頼していない広告の費用を請求されるようなことがあっても、応じる必要はありません。
登記費用(または司法書士への依頼費用)
マンションを売却する際、場合によっては「住所変更登記」や住宅ローンの「抵当権抹消登記」といった、登記手続きを行う必要があります。
登記は自分で手続きすることもできますが、申告書類の準備や法務局への提出などが必要となり、時間と手間がかかります。そのため、専門家である司法書士に依頼して、必要な費用を支払う形が一般的です。
では、マンション売却に伴って必要となる「住所変更登記」や「抵当権抹消登記」とはどういうものでしょうか?それぞれの内容と必要経費、さらには司法書士に依頼する場合の費用の目安を見てみましょう。
住所変更登記
マンション売却の際、登記簿謄本に記載されている住所と、住民票に記載されている住所が異なるケースがあります。たとえば主な例が、マンション売却前に、すでに新居に引っ越して住所変更を行ったケースです。
マンション売却にあたっては、登記簿上の住所と現住所が一致していなくてはなりません。そのため、売却時点で住所が一致していない場合は、住所変更登記と呼ばれる手続きを行う必要があります。
住所変更登記を行うには、次に説明する抵当権抹消登記と同じく、登録免許税として1つの不動産につき1,000円かかります。加えて司法書士への支払いとして、1~2万円が必要になるのが一般的な相場です。
抵当権抹消登記費用
抵当権抹消登記とは、金融機関から住宅ローンを借りる際に設定した「抵当権」を抹消するための手続きです。
住宅ローンを借りてマンションを購入する際、多くの場合マンションを担保にしています。
万が一ローン返済が滞ると、金融機関はマンションを自由に差し押さえて売却できる権利を持っています。この権利を「抵当権」といい、売却前にはローンを全額返済して、抵当権を抹消しておかなければなりません。
住宅ローンを全額返済しても、自動的に抵当権が抹消されるわけではありません。全額返済が終われば、銀行から抵当権抹消に関する案内があります。
当然ながら、抵当権がついたままの「いつ差し押さえられるか分からないマンション」を買う人はいません。しかるべき手続きを行って、抵当権を抹消しておきましょう。
抵当権抹消登記に必要な経費として、住所変更登記と同じく1つの不動産について1,000円の登録免許税がかかります。
加えて司法書士に手続きを依頼する場合は、司法書士にも費用を支払う必要があります。司法書士事務所や地域によっても異なりますが、抵当権抹消登記を依頼した場合、費用は1~2万円が目安です。
繰上返済手数料
住宅ローンの抵当権を抹消するためには、残っている住宅ローンの全額を一括して返済することが必要です。これを「全額繰上返済」といい、「繰上返済手数料」と呼ばれる手数料がかかります。
金融機関によって手数料の金額は異なりますが、たとえば三菱東京UFJ銀行の場合、申し込み方法ごとの繰上返済手数料は次の通りです。(2017年3月時点)
- インターネット・・・16,200円
- テレビ窓口・・・16,200円
- 窓口・・・21,600円
※すべて税込
(参考)三菱東京UFJ銀行ホームページ:「繰上返済手数料改定のお知らせ」
繰上返済手数料は、住宅ローンのタイプによっても異なります。あらかじめ借り入れを行った金融機関のホームページなどを見て、どれだけ手数料がかかるのか把握しておきましょう。
水道光熱費
マンション売却前に新居に引っ越していた場合、考慮しておきたいのが水道光熱費です。
もし先に新居へ引っ越す場合、売却予定のマンションの電気やガス、水道などは解約しようと考えるかもしれません。
しかし、内覧に来る時間帯は、明るい昼間だけとは限りません。また、季節によっては冷房や暖房なども使うでしょうし、内覧中にトイレや洗面所を使うこともあるかもしれません。
内覧を快適に過ごしてもらうには、電気やガス、水道はできれば解約しないほうがベターです。売却までは月々の水道光熱費が必要と考えて、予算に入れておくとスムーズです。
各種税金
マンションを売る際、「5. 登記費用」で触れた登録免許税以外にも印紙税などの税金がかかります。
売却によって利益が出た場合は、所得税や住民税などの納税義務も生じ、翌年の確定申告で税金を納める必要があります。
別記事(「マンション売却にかかる税金のすべて」)で詳しく解説していますので、事前に、マンション売却にかかる税金を把握しておきましょう。
まずは、必要かどうかの見極めを!
このように、マンション売却に際しては、仲介手数料以外にも必要となる費用が存在します。ただし、無理にかける必要のない費用が存在するのも事実。必要かどうかの見極めが肝心です。
マンションが売れるために本当に必要な費用は、当然かける価値があります。
ただし、より新築に近い状態を目指してリフォームやハウスクリーニング費用をかけた結果、売却価格がはね上がってしまっては、かえって敬遠される恐れもあります。
大切なことは、できるだけ費用を抑えつつ、理想の売却金額でマンションを売ることです。費用対効果を考えながら、客観的な目で必要十分な費用をかけるようにしましょう。