不動産会社選びを進める中で、「囲い込み」という問題を知り、不安に思っている方もいるのではないでしょうか?後悔しないためにも、囲い込みの手口や問題点を把握しておきましょう。
囲い込みを避けるための対策やチェック方法もあわせて解説します。
囲い込みとは?
不動産業界において、「囲い込み」が行われていることが問題になっています。
囲い込みとは、売却依頼を受けた物件情報を、不動産会社が自社だけで抱え込むこと。違う言い方をすれば、「他社には関わらせないこと」を指します。
不動産会社が囲い込みを行うことは、宅地建物取引業法(宅建業法)で禁じられています。なぜなら、売主にとって不利益になるからです。
マンションの売却を依頼している売主が望むのは、「少しでも早く」「適切な価格で」マンションが売れることです。
ところが囲い込みが行われると、多くの購入希望者に物件をみてもらう機会が失われてしまいます。その結果なかなかマンションが売れず、売却期間が長くなる可能性があるのです。
影響は、売却期間が長くなるだけではありません。売却期間が長引けば、「売れ残っている物件」というイメージがついてしまいます。すると、値下げせざるを得ない可能性もでてきます。
囲い込みの方法
では具体的に、囲い込みはどのような方法で行われるのでしょうか?
たとえば、囲い込みを行う不動産会社をA社としましょう。A社は、自社の顧客に対しては物件の案内を行います。ところが、B社やC社など他社からの問い合わせに対しては、姿勢が一変するのです。
たとえば、物件に対して他社から問い合わせが入っても、「もう予約が入っている」「購入希望者がいて、商談が進んでいる」といった理由で、紹介を断ります。つまり、故意に物件情報を隠し、文字通り「囲い込んで」しまうのです。
売主にとって囲い込みは、見込み客をみすみす逃す行為です。
にもかかわらず、実際には、囲い込みという行為が多く行われていることを、頭に入れておく必要があります。
なぜ囲い込みが行われるのか?
繰り返しになりますが、囲い込みは売主に対して大きなダメージを及ぼす可能性のある問題です。売れなければ、不動産会社にも仲介手数料が入りません。
一見すると、不動産会社にもダメージを及ぼすように見えます。では一体なぜ、不動産会社は囲い込みを行うのでしょうか?
不動産会社が囲い込みする目的は、売主と買主の両方から仲介手数料をもらうことにあります。いわゆる「両手仲介」を狙って、囲い込みを行うのです。
両手仲介とは、不動産業界の専門用語の一つ。売主と買主が、同じ不動産会社を通して売買契約を結ぶことを指しています。
両手仲介が実現すれば、不動産会社には売主と買主の両方から仲介手数料が入ります。要は、自社で売買契約をまとめることで、不動産会社は倍額の仲介手数料を手にすることができます。この両手仲介こそが、囲い込みを行う狙いなのです。
両手仲介自体が悪と断言しているわけではありません。不動産会社の営業努力によって、自然と両手仲介が発生するなら問題はありません。ただし、故意に情報を隠す囲い込みによって両手仲介を実現するのは、決して許されることではありません。
大手だからといって安心できません
では、囲い込みを行う不動産会社とは、どのような会社なのでしょうか?
囲い込みというと、中小の不動産会社が小規模で行っているイメージがあるかもしれません。実は、知名度の高い大手不動産会社でも安心できないのです。
以前、大手週刊誌が、不動産会社の囲い込みの実態調査レポートを公表して話題を呼びました。その中には、誰もが知る大手不動産仲介三者の名前も登場しています。
画像はDIAMOND onlineより引用
このレポートによれば、業界最大手の不動産会社は、調査件数189件のうち、40件の物件で囲い込みを行っていました。つまり5件に1件以上を囲い込んでいた計算です。
囲い込みを指摘された大手三社は、囲い込みの事実を否定していますが、囲い込みを行うかどうかは、不動産会社の知名度や大きさだけでは判断できないことが分かります。
囲い込みのチェック方法は?
売却開始から時間が経ってもまったく売れる気配がなく、内覧希望者すら現れない場合、囲い込みの可能性もゼロではありません。囲い込みの可能性があると感じたら、どのようにチェックすればいいのでしょうか?
囲い込みが行われているか否かを確かめるなら、実際に問い合わせてみるという方法があります。
友人や知人に協力してもらい、別の不動産会社経由で問い合わせの電話をしてもらいましょう。その後、友人や知人から、一般客を装って物件確認の電話を直接入れてもらいます。
最初の電話に対して「商談が進んでいる」といった対応であれば、囲い込みを疑う必要があります。後の電話に対して、物件を積極的に案内する姿勢を見せたら、囲い込みの可能性は濃厚と考えられます。
このように直接電話をしてみることで、囲い込みが行われているか否かの判断はある程度できます。「囲い込みをしているのでは?」と疑念を抱かせる不動産会社であれば、その会社と媒介契約を結び続けることは考え直すべきです。
もちろんマンションが売れない場合は、相場より割高であるなど、他の理由がある場合もあります。ただし、普段の対応などから、囲い込みの可能性が高いと感じるなら、信頼できる不動産会社と媒介契約を結び直したほうが良いでしょう。
囲い込みされないための対策
そもそも囲い込みされないためには、どのような対策をすればいいのでしょうか?事前に知っておきたい2つの対策をお伝えします。
1. まずは評判を調べる
一つ目の対策は、「まずは評判を調べる」ことです。
そもそも囲い込みの事例がある不動産会社と契約を結ぶことは避けましょう。大手不動産会社だからといって、決して安心できません。大小の規模を問わず、不動産会社を選ぶ際には評判を調べることをおすすめします。
具体的な方法としては、インターネットで「会社名 囲い込み」といったキーワードで検索する方法があります。悪い評判が立っていないか調べましょう。
ただし、インターネット上の情報をうのみにしてはいけません。不動産業界に限ったことではありませんが、インターネット上では同業者同士の足の引っ張り合いが起きています。偽の情報が紛れていることがあるのです。
囲い込みに関して気になる情報を見つけたら、誰が発信している情報なのかをチェックしてください。
たとえば、匿名の掲示板や運営者不明のサイトに書かれている情報であれば、信用することはできません。なぜなら同業者の足を引っ張るために書かれた、誤った情報である可能性も否定できないからです。
反対に、情報発信者の身元がはっきりしており、なおかつ専門家である場合は、信頼度は上がります。信頼に値する情報源であるのか、根拠に基づいた情報であるのかを見極めた上で、情報として生かしましょう。
2. 依頼時に、囲い込みをしないよう担当者に念を押す
2つ目の対策は、「依頼時に、囲い込みをしないよう担当者に念を押す」ということです。
選んだ不動産会社が、囲い込みを行わない業者であることが理想です。ただし事前に見極めることは困難です。
マンション売却の依頼をするときは、囲い込みをしないよう担当者に念を押しておきましょう。囲い込みについて知っているという事実を伝えるだけでも、抑止力になります。後悔しないためにも、きちんと念を押しておきましょう。
まとめ
囲い込みは、売主に不利益をもたらす行為です。決して許されることではありません。ところが両手仲介を狙いとして、囲い込みが横行しているというのも現実です。
囲い込みに巻き込まれないためには、事前に対策を行っておきましょう。囲い込みの可能性を感じたらすみやかにチェックして、信頼できる不動産会社と契約し直すことも大切です。