売買契約書に署名・捺印すると、記載された内容で売買契約が成立します。売却キャンセルや引き渡しの遅延があれば、違約金などのペナルティの対象となります。事前に内容をしっかり確認しておきましょう。
この記事では、あらかじめ売買契約書に目を通す際、確認しておきたい7つのポイントについて解説します。
売買契約書とは?誰が作る?
売買契約書とはその名の通り、売買契約に関する約束事を記した書面のことです。マンションなどの不動産は高額のため、契約締結にあたっては売買契約書を作成します。
売買契約書は、仲介する不動産会社が作成します。売主もしくは買主は、署名・捺印欄以外は、内容を記入する必要はありません。
契約日当日、売主と買主が売買契約書に署名・捺印を行い、基本的にはその場で手付金の授受を行うことで、売買契約が成立します。
売買契約書は多くの場合、不動産会社が所属する業界団体が用意している“ひな形”を使用しています。欄外に「全国宅地建物取引業協会連合会」「不動産流通経営協会」などの団体名が記載されていれば、業界団体のひな形を使っているということです。
そもそも売買契約書に記載すべき事項は、宅地建物取引業法(宅建法)によって明確に定められています。
契約書そのものに関して、有効性や公平性などを心配する必要は、基本的にありません。
売買契約書は事前にチェックすること!
売買契約書は、一定のひな形をもとに作られるものです。とはいえ売買契約書に書かれた内容自体は、事前に詳しく確認する必要があります。
なぜなら売買契約書に署名・捺印すると、それ以降の内容変更はペナルティの対象となりえるからです。
特に「特約事項」「特記事項」「備考」「その他」などの欄内には、不動産会社が文章を入力しています。売主にとって不利に働く内容がないかを、きっちりと確認しておくことが大事です。
売買契約書は事前にコピーなどをもらって、必ず内容をチェックしておきましょう。分からない点や気になる点があれば、不動産会社に確認することが大切です。
売買契約書で確認したい内容一覧
では、売買契約書を事前に見るときには、どのような点をチェックすればいいのでしょうか?売買契約書で確認したい内容について、一つずつポイントをお伝えします。
記載されている住所や売買価格は正しいか?
まずは、マンションの住所や売買価格など、基本的な内容に誤りがないかを確認しましょう。
一般的には、不動産会社への依頼時に提出した登記簿謄本(登記事項証明書)に基づいて、住所が記載されます。
売買価格についても、念のため確認しておきましょう。
口約束した金額ではなく、売買契約書に記載された金額が、実際の売買価格となります。最終的に同意した金額になっているか、念のため確認しておくことをおすすめします。
手付金の額は妥当か?
次に、手付金の額が妥当かどうかもチェックしておきましょう。手付金とは、売買契約成立の際に、買主から売主に交付される金銭のことです。
手付金の相場は、物件価格の10%前後です。もし相場よりかなり低い場合や、逆に相場よりかなり高い場合は、万が一の「キャンセル時」に注意が必要です。理由を解説します。
手付金が相場よりかなり「低い」場合
まず、手付金が相場よりかなり低い場合について。
売買契約成立後であっても、一定期間内であれば、買主の一方的な申し入れで契約をキャンセルすることができます。買主は手付金を放棄して、一方の売主は手付金を受け取ることになります。これを「手付解除」といいます。
契約が白紙に戻れば、売主は大きな時間のロスとなります。にも関わらず、低い金額の手付金を受け取るだけではダメージが大きくなります。
手付金が相場よりかなり低い場合は、万が一に備えて、あらかじめ交渉しておくと良いでしょう。
なお、手付解除ができる期間は決まっており、「手付解除期日」といった名目で、売買契約書に書かれています。手付金の金額を確認する際、併せて手付解除ができる期間にも目を通しておきましょう。
手付金が相場よりかなり「高い」場合
次に、手付金が相場よりかなり高い場合について。
売買契約成立後のキャンセルは、買主からの申し入れだけではありません。売主の事情で「マンションを売れなくなった」というケースも存在します。
売主都合で売買契約をキャンセルする場合、注意が必要です。なぜなら売主がキャンセルを申し入れる場合は、「手付金を倍返しする」というのが一般的だからです。
つまり手付金が高すぎる場合、万が一の売主都合のキャンセルの際に、大きな負担を強いられることになるということです。
手付の定義や、手付解除が可能な期間などについては、別記事で詳しく解説しています。売買契約書で手付の金額をチェックする際に、ぜひ参考にしてください。
引渡し日は売主として問題なく、引渡し可能な日程になっているか?
売買契約書で忘れずに確認したいのが、「引き渡し日」です。売主として問題なく、引き渡し可能な日程になっているかどうか、慎重に判断しましょう。
なぜなら、売買契約書に記載された引き渡し日が守れなかった場合、売主にペナルティが課される場合があるからです。
売買契約を結んだら、滞りなく引き渡しまで進むのが理想です。とはいえ何らかの事情によって、引き渡し日が守れなくなる事態も発生します。
特に気をつけたいのが、転居先の確保です。マンション売却と新居購入を同時に進めているなら、綿密な計画を立てて、新居購入の手続きを進めましょう。
引き渡し日が遅れた場合は、違約金や損賠賠償を請求される可能性もあります。最悪、契約解除となる場合もあります。
引き渡し日に確実に渡せるかどうか、転居先の購入もしくは賃貸契約手続きのスケジュールを確認して、きっちりと把握しておきましょう。
違約金の額は?
売買契約書を見る際、他にも確認しておきたいのが「違約金の額」です。売買契約書には、売主もしくは買主のどちらかが契約違反をした際に、契約解除や違約金を請求する内容が書かれています。
契約違反というと、「引き渡し日を守らない」「支払期日を守らない」などの例が挙げられます。
違約金は、売買価格の10%~20%に設定されていることが一般的です。
契約違反がなく進むことが理想ですが、何が起こるか分かりません。相場に合った額かどうかを、念のため確認しておくことをおすすめします。
融資特約(ローン特約)の利用はあるのか?期間は?
売買契約書を確認するときには、「融資特約の利用の有無と期間」も併せてチェックしましょう。融資特約を利用する場合、場合によっては契約が白紙に戻る可能性もあるからです。
融資特約は「ローン特約」という別名もある通り、住宅ローンに関する特約です。買主が住宅ローンを利用してマンションを購入する場合、融資特約が売買契約書の中に盛り込まれます。
売主にとって避けたいのは、「買主の住宅ローンの審査が通らない」ケースです。売買契約書に融資特約が盛り込まれている場合、買主は売買契約を解除することができます。
つまり、売主はまた一から購入希望者を探さなくてはいけません。既に受け取った手付金も、無利息で返還しなくてはいけないのです。
まずは、融資特約の利用があるのかないのかを確認しましょう。もし利用する場合は、あわせて期間も確認してください。
住宅ローン特約には、期間が設定されます。期間が長ければ長いほど、結果が出るまで長い間待たなくてはいけません。融資特約の期間があまりに長い場合は、期間の再検討を申し出ても良いでしょう。
融資特約以外の特約利用はあるか?
売買契約書でまずは融資特約の利用有無を確認したら、他の特約があるかどうかも確認しましょう。個別事項がある場合、特約の欄に記載されています。
代表的な特約には、「買い替え特約」があります。買い替え特約があると、一定の条件を満たすことで、買主が一方的に購入を白紙にすることができるからです。
買い替え特約を結んでいると、買主が期間内に一定金額以上で現住居を売ることができなければ、ペナルティなしで売買契約を取り消すことができます。
売主にとって、買い替え特約は契約解除のリスクを伴う特約です。知らずに特約に同意することのないよう、あらかじめ内容を把握しておきましょう。
付帯設備表や物件状況報告書の内容は?
売買契約書には、付帯設備表や物件状況報告書などが添付されています。忘れずにチェックしておきましょう。
付帯設備表とは、「マンションの付帯設備」についての説明が記載された書面です。たとえば照明器具やエアコン、給湯器、網戸の有無などの情報が記載されています。
一方の物件状況確認書には、「マンションの状況」についての説明が記載されています。たとえば、売買契約を結ぶ前に雨漏りがあった場合は、その旨が記載されます。売主が住んでいるあいだに補修工事を実施した場合も、その内容と共に記載しておきます。
一つ一つの設備や物件の状況について、誤りがないかを確認しておきましょう。また、引き渡しをした後に付属設備に不備が発覚すると、売主が責任を負うことになります。
特に長期間使っていない床暖房や食器洗い乾燥機などがある場合は、動くかどうかを確認しておくことをおすすめします。
まとめ
マンションの売買契約書は、慎重にチェックしたい書面です。署名・捺印すると、記載された内容で契約を結ぶことになるということを、しっかり頭に入れておきましょう。
特にチェックしたいのが、この記事で紹介した7つのポイントです。気になる点があればそのままにせず、必ず不動産会社の営業マンに相談することをおすすめします。