中古マンションの瑕疵担保責任について

投稿日:2018年8月7日 更新日:

マンションを売却するときには、「瑕疵担保責任」に注意しなければなりません。

売却するマンションに「隠れた傷」があると、売主は買主に対して一定の責任を負う可能性があります。この責任を追及されると、損害賠償請求や契約解除されるおそれもあるので、そのような責任を負わないよう、慎重に対応する必要があります。

瑕疵担保責任とは、どのような場合に発生し、どの程度の責任が発生するのでしょうか?また、責任を問われる可能性がある「期間」についても把握しておきましょう。

今回は、中古マンションを売却するときに売主が負う可能性がある「瑕疵担保責任」について、説明します。

瑕疵担保責任とは?

そもそも、マンション売買の際に問題となる「瑕疵担保責任」とは、どのような責任なのでしょうか?

これは、売買の目的物に「隠れた瑕疵」がある場合、売主が負う可能性のある責任です。

瑕疵というのは、「傷」や「欠陥」のことです。売買の対象となる物件に傷や欠陥があると、買主にとって不都合があるため、売主に一定の責任を負わせようというのです。

たとえば、雨漏りがする場合やシロアリが巣くっている場合などには、「瑕疵」があると判断されます。

瑕疵担保責任が適用されるためには、その傷や欠陥が「隠れている」ことが必要です。「隠れた」とは、「通常の注意では発見できないこと」を意味します。瑕疵担保責任が発生するのは、買主が瑕疵について知らず、知らないことに過失がない場合に限られます。

中古マンションを売却するとき、マンションにこうした欠陥があると、引き渡し後であっても、売主は買主から瑕疵担保責任を追及されるおそれがあります。

瑕疵担保責任の範囲は?

それでは、瑕疵担保責任の範囲はどこまで及ぶのでしょうか?どのようなケースで「瑕疵」があると判断されるのかを具体的に説明します。

瑕疵には、物理的な瑕疵と法律的な瑕疵があります。

物理的な瑕疵

物理的な瑕疵というのは、たとえば建物で雨漏りが発生したりシロアリが巣くっていたりする場合、建物の立て付けが悪かったり傾いていたりして重要な構造に欠陥がある場合や、建物の腐食がある場合などです。土地に産業廃棄物などが埋まっていた場合にも、瑕疵があると判断されます。

法律的な瑕疵

法律的な瑕疵というのは、たとえば土地の境界が確定されていなかった場合や建築制限があって、予定していた建物を建てられない場合など、法律的な制限があるケースです。

これらのうち、マンション売買で問題になりやすい瑕疵担保責任は、雨漏りや水漏れなどの給排水設備の不具合が中心となります。

なお、瑕疵担保責任が発生する範囲は「売買の対象と一体となるもの」に限定されます。

マンションの場合、エアコンや給湯器などの「付帯物」は「建物と一体」とはみなされず、基本的には瑕疵担保責任が発生しないことになります。

瑕疵担保責任の期間は?

次に、瑕疵担保責任が発生する期間を確認しましょう。

瑕疵担保責任は、売買契約後一定期間経てば発生しなくなります。その期間は、売主が個人か不動産業者(宅建業者)かで異なります。また、新築住宅か中古住宅かでも異なるので、順番に確認しましょう。

売主が個人の場合

民法の原則によると、瑕疵担保責任の期間は、「瑕疵の存在を知ってから1年間」とされています。売主が個人の場合、基本的に買主が瑕疵の存在を知ってから1年間は、瑕疵担保責任を追及される可能性があります。

相手が気づかない場合には、いつまででも瑕疵担保責任を追及されるかもしれません。

ただ、瑕疵担保責任については、別のルールを定めることができます。たとえば、瑕疵担保責任の期間を、引き渡し後半年とか3ヶ月にすることもできますし、免除することも可能です。

売主が不動産業者の場合

売主が不動産業者(宅建業者)の場合には、宅建業法が適用されます。宅建業法は、一般消費者保護のため、宅建業者に対してより重い責任を課しています。

これによると、宅建業者は、瑕疵担保責任について、引き渡し後2年よりも軽くすることはできないことになっています。

そこで、不動産業者が売主になる不動産売買の多くのケースでは、瑕疵担保責任の期間を2年とする特約がついています。

新築住宅の場合

瑕疵担保責任の期間は、対象物件が新築か中古かでも異なります。新築住宅の場合には、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、基礎や柱、屋根や外壁など、住宅の主要構造部分については、瑕疵担保責任の期間が10年と決められています。

中古住宅の場合

これに対し、中古住宅の場合には、そのような制限がありません。そこで、個人が中古マンションを売却するときには、「売主が個人の場合」で説明したとおり、瑕疵担保責任の期間を引き渡し後3ヶ月や1ヶ月にすることもできますし、免除する特約をつけることも可能になります。

瑕疵が見つかるとどうなる?

瑕疵が見つかると、売主は買主から損害賠償請求を受ける可能性があります。

このとき、損害賠償の範囲は「信頼利益」に限られます。難しい言葉ですが、信頼利益とは「瑕疵がないと信じたことによって発生する損害」です。簡単にいえば、「払う必要のなかった費用」を意味します。

たとえば、契約を締結するためにかかった交通費や、リフォームするために購入した資材の費用等です。

これに対し、「履行利益」まで請求することはできません。履行利益とは、「もし完全な履行が行われていたら、受けとることができた利益」のことです。簡単にいえば、「得られるはずだった利益」を意味します。

たとえば、マンションに傷がなかったことを前提とした転売利益などは履行利益となるので、瑕疵担保責任として追及されることがありません。

信頼利益の範囲は、履行利益より小さくなります。

なお、瑕疵の存在により、契約目的を達成することができない場合には、契約を解除されます。たとえば、雨漏りが酷くて居住の用に堪えない場合には、買主が売買契約を解除できます。

瑕疵担保責任に関する事例

参考までに、瑕疵担保責任について争われた裁判事例をいくつか紹介します。

瑕疵担保責任が認められた事例

  • 建物に建ぺい率違反があったケースにおいて、瑕疵担保責任に基づいて契約の解除が認められた(東京地裁 昭和39.12.17)
  • 新築に近い鉄筋コンクリート造マンションで、防水工事の不完全や外壁の構造上の欠陥があったケースで「隠れた瑕疵」があると判断された(東京地裁 平成4.9.16)
  • マンション売買で、庭に設置した温室で園芸をするために購入したのに、隣接地に高い建物が建築されたため、日が当たらなくなったことが「隠れた瑕疵」と判断された(大阪地裁 昭和61.12.12)
  • 新築マンションで、共用部分の外壁の剥落が発生したときに、「隠れた瑕疵」があると判断された(福岡高裁 平成18.3.9)

瑕疵担保責任が認められなかった事例

  • マンションのバルコニーが、避難通路となっており使用上の制約がある場合は、「隠れた瑕疵」に該当しないと判断された(広島地裁 昭和54.3.23)
  • 海辺のリゾートマンションを購入した際、付近に別の建物が建ち、眺望等が阻害されたことは「隠れた瑕疵」として認められなかった(東京地裁 平成2.6.26)

エアコンや給湯器などの設備について

上述したとおり、瑕疵担保責任の範囲には、建物と一体とならないエアコンや給湯器などは基本的に含まれません。現状(現在の状態)で引き渡しをすれば、売主の責任は完了します。

しかし、引き渡し後すぐに故障した場合、相手からクレームが来てトラブルになるおそれがあります。契約書内に何も規定していなければ、瑕疵担保責任を追及される可能性があります。

そこで、売買契約の際に「付帯設備一覧表」を添付して、その中に各設備の状況を記載しておきましょう。引き渡し時、買主にも実際に稼働状況を確認してもらいます。

なお、事前に確認したときに、すぐに壊れてしまうおそれのあるものが混じっていたら、トラブル予防のため、予め撤去しておく方が安心です。

瑕疵担保責任を問われないためには?

瑕疵担保責任を問われないようにするためには、瑕疵担保責任の軽減規定または免除規定をおくことが大切です。

たとえば、契約書において、「瑕疵担保責任を免除する」という免除規定をおいておけば、売主は瑕疵担保責任を負いません。

免除に納得してもらえない場合には「瑕疵担保責任の期間を、引き渡し後3ヶ月(1ヶ月)にする」などと定めておけば、期間が限定されてリスクが相当軽減できます。

実際に、中古マンションの売買では、瑕疵担保責任免除規定をおくケースが多くあります。

また、売主として誠実に対応することも重要です。事前に把握している不具合があるなら、正直に買主に伝えておきましょう。

「問題を伝えたら、高く売れなくなる」などと考えて、隠していると、後から損害賠償請求や解除をされてしまうおそれがあります。

今回は、中古マンションを売却するときに知っておきたい瑕疵担保責任について、解説しました。記事を参考にして、トラブルを上手に予防しましょう。





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