購入希望者から買付証明書を受け取ったら、売主は何をチェックすればいいのでしょうか?書かれている購入希望価格がこちらの条件に合わない場合、どのように交渉を進めればいいのでしょうか?
この記事では、買付証明書を受領したらチェックしたいポイントと、価格に関する交渉方法を紹介します。
買付証明書(購入申込書)とは?
買付証明書とは、購入希望者が売主に対して、「購入したい」という意思を表示するために提出する書面です。買付証明書は、「購入申込書」と呼ばれることもあります。
購入希望者が買付証明書を提出するタイミングは、基本的には内覧を終えた後です。実際に物件を見学して気に入ったら、不動産会社を通して提出します。
では、買付証明書にはどのようなことが書かれているのでしょうか?主な内容は次の通りです。
・購入希望価格
・住宅ローンの利用の有無とその金額
・手付金の額
・契約締結の希望時期
・引渡しの希望時期
このように、購入の金額や時期などが書かれ、一般的には最後に署名捺印があります。いわば買付証明書の受け渡しが行われることで、はじめて売買交渉のスタートラインに立つというわけです。
買付証明書の効力
では、買付証明書には、どれぐらい効力があるのでしょうか?
結論から言えば、買付証明書には法的拘束力はありません。買付証明書を提出した後でも、購入希望者は一方的に申し込みを取り消すことができます。売主も、必ずしも書かれている希望に合わせる必要はありません。
買付証明書に書かれているのは、あくまでも購入者側の希望です。条件が合わない場合、売主は断ることもできます。売主側から別の条件を提示して、打診することも可能です。
買付証明書の提出はあくまで「申込」であり、「契約」ではないことを把握しておきましょう。
とはいえ、交渉を進めて売買契約を結ぶ上で、買付証明書が重要なたたき台になることは事実です。
特に複数の購入希望者がいる場合は、誰を選ぶかを決める上で重要な資料となります。交渉に入る前に、しっかりとチェックしましょう。
では、どこをチェックすればいい?
買付証明書を受け取ったら、売主はどこを重点的にチェックするべきでしょうか?特に大切なポイントを4つお伝えします。
1. 購入希望価格
買付証明書で最初に確認したいのは、購入希望価格です。購入希望価格には、買主がマンション購入にあたり、支払おうと考えている金額が書かれています。
売り出し価格よりも低い価格が記載されていることもあります。4200万円で売り出しているのに対して、4000万円と書いてあるケースもあります。
ただし、希望額より低いからと落胆する必要はありません。簡単に応じる必要もありません。マンションの売買においては、「値引き交渉がある」ものと心得て、冷静に対応しましょう。詳しくは後ほど説明します。
2. 住宅ローン利用の有無とその額
買付証明書の中で次に確認したいのが、「住宅ローン利用の有無とその額」です。
買主がいくら購入を希望しても、資金がなければ買うことはできません。多額の預貯金がある場合は別ですが、ほとんどの買主は住宅ローンを利用します。
住宅ローンの審査が通るかどうかは、申請してみなくては分かりません。いざ申請したところ審査が通らなければ、買主に購入意思があっても、売買契約は成立しません。
住宅ローン利用予定であれば、審査が通る見込みがあるのか、確認するようにしましょう。できれば、住宅ローンの仮審査を通過していることが理想です。
3. 手付金の額
次に買付証明書で確認したいのが、「手付金の額」です。手付金とは、売買の契約成立に際して、買主から売主に交付される金銭のことです。
買付証明書には、買主が支払う予定の手付金の額が書かれています。手付金の相場は、物件や地域などの条件によっても異なりますが、一般的には物件価格の約10%です。
たとえばマンションの売却額が3000万円であれば、約300万円が手付金となります。
もしも10%という相場を、大きく下回る金額を提示しているなら要注意です。なぜなら「手付解除」を想定している可能性があるからです。
手付解除とは、契約から一定期間内であれば、買主は手付金を放棄することで、一方的に売買契約を解除できるというものです。
話を進めた挙句、安い手付金が手元に入っただけで契約が白紙に戻っては、努力も水の泡です。手付金の額が低すぎないかをチェックして、気になる場合は買主に相場程度に上げてもらえるよう、打診してみることをおすすめします。
なお、手付の定義や、手付解除が可能な期間などについては、別記事で詳しく解説しています。買付証明書で手付をチェックする際に、ぜひ参考にしてください。
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4. 引き渡しの希望時期
買付証明書を受け取ったら、「引き渡しの希望時期」も忘れずに確認しましょう。買主が希望する時期に引き渡しが可能かどうかを、しっかりと検討しておく必要があります。
なぜなら、売買契約時に約束した引き渡しの時期を過ぎると、売主にペナルティが課される可能性があるからです。
マンションを売却すると、通常は決済と同時に、買主に引き渡しを行います。マンションにおける決済とは、マンションの代金を全額支払ってもらうタイミングのことです。
決済日は、売主から買主に引き渡しができ、なおかつ買主が必要資金を用意できる日をあらかじめ決めます。
もし引き渡しができなければ、売主は買主から、違約金や損害賠償を請求される可能性があります。最悪の場合、契約解除になるケースもあります。
もちろん、買付証明書の内容が契約条件になるわけではありません。ただし引き渡しの希望時期が、明らかに売主の事情と合わない場合は、あらかじめ相談しておく必要があります。
なお、引き渡しが遅れた場合のペナルティについては、別記事にて詳しく説明しています。トラブルを未然に防ぐためにも、あらかじめ把握しておきましょう。
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買付証明書の内容が希望条件と合わなかったら?
買付証明書の主なチェックポイントを紹介しました。では、書かれている内容が、売主の希望と合わない場合はどうするべきでしょうか?
特に、購入希望価格があまりに低い場合も、希望を受け入れるべきなのでしょうか?
結論からいえば、簡単に妥協する必要はありません。なぜなら購入希望者は、さまざまなマンションを見た上で、購入希望の意思をかためています。どうしても欲しい場合、売主が妥協しないと知れば、歩み寄る姿勢を見せることでしょう。
強気に出る必要もありませんが、下手に出る必要もありません。あくまで対等な立場で、交渉を進めるようにしましょう。
そのために大事なことは、マンション売却にあたって、「許容できる最終期限と最低価格」を、あらかじめ決めておくことです。
なぜなら、期限や価格を決めていなければ、いざ値引き交渉された際に、判断基準が分かりません。対処の仕方が分からず、購入希望者のペースで交渉が進む可能性があります。
値引き交渉の際に心得ておきたいポイントなど、詳しい内容は別記事にて紹介しています。ぜひ納得のいく交渉にするためにも、目を通しておきましょう。
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合意した内容は、必ず書面化しましょう!
買付証明書を受け取ってから売買契約に至るまでは、売主と購入希望者の間でさまざまな交渉が行われます。
両者の間で合意した内容については、必ず書面にまとめておきましょう。売主が購入希望者に対して、諸条件を書いて売り渡す意思を示した書面を「売渡承諾書(うりわたししょうだくしょ)」といいます。
口頭で売買の約束をしても、売買契約書を交わすまでは正式な契約を結んだことになりません。正式契約前に、売主と買主が条件面で合意したことを書面化しておけば、「言った言わない」の争いを未然に防ぐことにもつながります。
買主の気が簡単に変わるのを防ぐ意味でも、売渡承諾書を作成することをおすすめします。
売渡承諾書を作成するタイミングや作り方については、不動産会社に相談しましょう。担当営業マンが作成してくれます。
まとめ
内覧を終えて買付証明書を受け取ると、売買交渉のスタートラインに立つことになります。買付証明書には法的拘束力はありませんが、交渉のたたき台になるものです。内容を詳しく確認しておきましょう。
買付証明書に書かれた内容は、あくまで買主の希望です。条件が合わないなら、対等な立場で交渉を進めましょう。
交渉を進めて両者間で合意がはかれたら、担当の営業マンに相談して、「売渡承諾書」を作成することも大切です。